4つの象限

前回では物事は4つの象限に分けられることに触れました。また、『刃を研ぐというのはこの第二領域、『重要だが緊急ではない』ことに時間を割くことに他なりません。』とも触れました。

緊急、且つ、重要なこと

大体、組織や人が忙しくなったり時間に追われたりするのは第一領域である「緊急で重要」なことに対して、です。右の表にあるように。緊急で重要であるものごとは時間が短納期で決まっていて、長引かせる猶予がない、長引かせると被害が大きくなるような案件です。

私は会社員時代に製品の開発に携わっておりましたのでつねにこの第一領域との闘いでした。最初に大日程を作成するのですが、仕事を取るために非常にアグレッシブなスケジュールを組んだり、開発費や製品コストもかなり抑えたものを提案する。こうしないとコンペで負けてしまい、仕事が取れません。無理して仕事がなんとか取れたものの、アグレッシブなスケジュールの中で開発費を抑えているため、プロジェクトメンバーを少なくしたり、低価格にするためにこれまで使用したことのないような低コストの部品を採用したり。一見矛盾しているんですよね。人数減らしてアグレッシブなスケジュールには対応できないし、低コスト部品を使うためにはそのための信頼性評価などが必要で時間もお金もかかる。ですので開発プロジェクト全体が常に「緊急かつ重要なこと」なのです。

日常生活の中でも病気や事故への対応、客商売をしている方であれば心無い人からのクレーム対応も緊急、かつ重要なことでしょう。

これらのことはある意味、仕方のないことかもしれません。個人で頑張っていれば自分の責任として一人で頑張り切れるものなのかもしれません。ただ、メンバー全員がことの重要性、緊急性を理解しているとも限りませんし、メンバーによっては重要度が違うかもしれません(そこまで仕事に忠誠心がなかったり?)からそこまで頑張ってはくれないかもしれません。

『緊急かつ重要なこと』を『緊急ではないが重要なこと』へ

刃を研ぐ』とは『重要』なことに対して『緊急』な事態になる前に手を打つ、もしくは緊急にはなりえないように準備をすることです。目先の利益だけに拘らず、未来を見据えたことに時間やお金を使うことです。会社では次世代向けの製品開発、に向けた要素開発などがそれにあたりますかね。仕事を取るために急にやろうと思っても上の私の例のようになってしまいます。

ま、当時の私のような現場の人間からすると、『そうは言っても・・・』『それが出来れば苦労しないよ・・・』となります、実際。

私が当時やっていたのは、起こってしまったことは仕方ない(大体、私が引き継いだ時点ですでにこうなっていた)。このことを『緊急』と捉えるのは責任者である私だけ、メンバーに対しては『緊急』とは捉えさせないようにしていました。いや、実際『緊急』には違いないのですが、日々の緊急業務そのものをメンバーにとって将来のための投資(実践的な研修)と思わせることにしました。こういった緊急業務をやりきれたらどんなスキルが身につくだろう?どんな自信が身につくだろう?どれくらい成長できるだろう?と考えさせるのです。そうすると個人差はありますが、目先の忙しさだけでなく、各メンバーが自分で色々考えるようになり、それぞれの現場で「ああした方がよい」「これは今やるよりも後に回してあの件と一緒やった方がよいのでは?」など活発に意見が出てきます。

だからと言って楽になるわけではないですが、日々のToDoリストに忙殺されるよりはよほどクリエィティブになり、みんなで協力しあって打破していこう、という一体感が生まれます。初めは管理者、責任者は上層部やお客さんから責められますが(笑)、腹を括ってそれに耐えることが出来れば、いや、メンバーの成長が見れる、それによって組織力が上がるのですから全然耐えられます、開発が終わった時の充実感が何物にも代えられないものになります。

話が逸れましたが、これは物事の捉え方でこのように出来る、という例になります。

人は物事によって悩むのではなく、その受け取り方によって悩むのである』 エピクトテレス(古代ギリシャ)

先行投資?

上記の例はちょっとイレギュラーですが、本来は緊急なことが起こらないように普段から主体的に取り組まなければいけません。病気になって仕事を休んでは収入がなくなります。そうならないように定期的に健康診断を受ける、免疫を付けるよう体力作りをする。クレームを受けないように製品、サービスの向上を普段から図る、クレームを受けた際に素早く対応できるような体制を作っておく。先々のことを踏まえて色々なところへ人脈を作っておく。旅行に行って異文化に触れる。

こういったことを普段から出来ている人は出来ていない人に比べて緊急な物事が少ないと思います。万が一緊急なことが起こって対処が早いですね。

行動を変えてみよう!

自分の行動を振り返って棚卸、整理してみると意外に重要ではないこと(第3領域、第4領域)に時間を取られていないでしょうか。例えば、上表の「世間話」を「人間関係つくり」と思えば重要なことですが、そうなるとただの世間話とは思わなくなります。またまた話は逸れましたが、自分が(無意識に)時間を費やしてしまっている第3領域、第4領域の物事をやめて(もしくは捉え方を変えて)第2領域のものごとに時間を費やすようにしていきたいですね。

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